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恩師でもないが恩師との再会

高校時代の油画の先生とばったり会う。
とりあえずやあやあ久しぶりなどと挨拶。
目つきがきつくなったなあと思ったら案の定教師を辞め、部長刑事になったとのこと。
いきなり部長刑事になるわけがないから、きっと教師を辞めたあと派出所勤務から始め、地道な努力と政治的行動によって部長刑事に昇りつめたのであろう。
で、部長刑事がこんなところで何をしているのかといえば、犯人を追いつめているのだという。
追いつめた犯人の住居の近くで張っているのである。
しかし見渡したところ住居はうち以外にない。
犯人のうちは、じつはうちのことであった。
だとすると犯人は私か。いやちがう。うちで飼っているブルドッグのたんくま君である。
たんくま君はブルドッグのくせに気が小さくいつもおどおどしている。
気が小さくおどおどしているわりには平気で殺人などを行う冷血鬼でもある。
ははあ。ではたんくま君の非道な行いもいよいよ年貢の納め時か。
私は妻とふたりで今まさにお縄を頂戴しようとするたんくま君を哀れみをもって眺める。
そうだ、ついでに、あの時の私の罪もたんくま君の仕業ということにしてしまおうか。
あ、そうだ、ついでに、あの時のあの罪もたんくま君がやったということに、
そうそう、あの酷い罪もたんくま君のせいにすればいいかも、
などということを私と妻はそれぞれ考えているわけだが、それでますますたんくま君に悲哀を感じてしまうわけである。