チルドレンクーデターに鈴木創士がゲスト入りした経緯、その因果と秘話

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事の発端の発端

 
 

EP-4 unit 3

 チルドホソイがなぜ EP-4 5.21 VJ赤松正行の補佐で参加したのかというと、それはEP-4 unit 3 のアートワークを担当させてもらっていたご縁があったからという原因があります。

 2010年ごろから俄に蠢きだしたEP-4、次々にCDをリリースし、大がかりなライブを行い、周囲を巻き込んでいった中で、佐藤薫と数十年ぶりに再会したお調子者チルドホソイが惜しまぬ協力を約束してEP-4 unit3のためのビデオ素材制作にかかわったのです。

 EP-4 unit3のためのビデオは、アルトーの詩をベースに言葉が蠢くもので、基本的には静かで淡々とした映像です。VJ的な派手な動きではなく、あくまでも音楽の背景にぼんやり登場する言葉を表現するための映像でした。このビデオのアイデアはもちろん佐藤薫によるもので、最初はいくつかの詩がスライドショー的にゆっくり登場するという完成イメージでしたが、映像素材を作っているうちにチルドホソイに棲んでいる集中魔人が目を覚まし、人知れずちょっと凝ったビデオ素材ができあがりました。

Artaud Artaud

 このArtaudのビデオ素材は、EP-4 unit3の何度かのライブの背景に登場し、その都度少しずつバージョンアップを重ね、仕舞いには佐藤薫の意向もあって結構派手派手しい映像へと進化していきました。
 
 言葉の映像はライブ背景に留まらず、CDのカバーアートにもなりました。2013年にBLACK SMOKER RECORDSから発売された「À Artaud」です。


 

註釈

EP-4 unit3 / À Artaud

A Artaud cover-art
EP-4 unit3 / À Artaud | BLACK SMOKER RECORDS

“ EP-4の佐藤薫とBANANA-UGによる音響系エレクトロニクス・ノイズ・ユニット。重厚なニューウェイヴ・ダンス・ミュージックのEP-4本体に対し、アナログ・シンセや様々なガジェットを用いたこのunit3では、より即興性の高い、マッシヴで音響彫刻的なパフォーマンスを展開する。80年代初期におけるノイズ/エレクトロニクス系ユニットのオリジネーターのひとつとして、2010年に活動を再開。’11年9月には、東京で開催された江戸糸あやつり人形座 『アルトー24時』(演出:芥正彦、人形演出:結城一糸、原作:鈴木創士)の舞台音楽を担当し大きな反響を呼んだ。’12年秋にはディーター・メビウス(クラスター、ハルモニア他)の来日公演(大阪)、UKニューウェイヴの大御所バンドであるワイヤーの来日公演(東京)のそれぞれフロントアクトも担当。さらなる活躍が期待されている。 ”

 

1990 SUBHUMAN

 
 しかしなぜビデオの制作を頼まれたのでしょう。確かにこれまで数々の映像やアニメを作っていましたが、そんなことは佐藤薫は知らないはずです。なぜ知ったか、その理由のひとつはアリスセイラー「1990 SUBHUMAN」です。この作品に付属するビデオのキャプチャをチルドホソイがせっせとやっていたのです。ある日アリスセイラーが言いました。
「ほそいくん、あのな、お願いがあるんやけどいいかな」
「なんでもやります」
 昔から永遠の下僕を誓っていたので即答です。ビデオキャプチャでも何でもやるのです。

 もうひとつの理由は第二回でもさらりと書いた2011年高円寺Highで行われたライブ、アリスセイラーによるぴいち姫と博士の出し物です。これのバックグラウンドビデオをアリスセイラーに頼まれてホソイが作っていました。

SS 2015-04-19 21.25.49

この時のライブというのが、大がかりなイベント「CASE OF TELEGRAPH 2011」の翌日か何かにアリスセイラーが意地と根性でやり遂げたショーでありまして、実質アマリリス【改】の最初のストーリーのようなんですね。この日のライブはネット上でも騒ぎになりましたし、その経緯も面白いのですがここでは割愛します。

 さてそれら映像制作の実績(といえるほどか?)を確認した上で、佐藤薫がある日ホソイにこう言いました。
「細井くん、ちょっとさ、お願いがあるんだけどいいかな」
「何でもやります」即答に迷いはありません。こうしてunit3のアートワークを手掛けることになりました。

註釈

1990 SUBHUMAN・21st Century Queen V.I.P. Edition

アリスセイラー サブヒューマン
1990 subhuman (Amazon)

アリスセイラーのアルバム「SUBHUMAN」とビデオ作品「21st Century Queen」を復刻したCD+DVD。
ただでさえお得なこのアルバムに、初回は電子書籍「漫画本」がさらにオマケとして配布された。

漫画本 表紙

ホソイヒサトによる「Love to Love You Baby」は 2013年Monster Nightでプロジェクター披露され山崎春美の絶賛も得た。

Love to Love You Baby-01

原初

 一気に過去に遡ると因果の根本に辿り着きます。チルドレンクーデターにとってそれは1983年にリリースされたカセットブック「チルドレン・クーデター」です。
 このカセットブックのプロデュースと最終ミックスを佐藤薫が手掛けました。そもそも書店流通のカセットブックというもの自体、佐藤薫とペヨトル工房が仕掛けています。パイオニアです。そしてチルドは普段のライブも佐藤薫プロデュースのdee-Bee’sによく出ていましたし、そもそも最初からチルドレンクーデターってのはEP-4ありきの存在だったわけです。佐藤薫チルドレンと言っても過言ではありません。
 当時は若造すぎて無神経だったチルドバンマスは、後に時々振り返っては、あの頃世話になった人たちにお礼の一つも言えてないし、失礼しまくったお詫びもできていないし、まったく人として駄目すぎてお話にならんなと反省することもしばしばありました。誰でも大人になればそういうことがわかってきます。わかってきたんなら恩義は返すものです。

佐藤薫

 佐藤薫の知見やカッコ良さはよく語られますが、拗くれて変なセンスの持ち主であることはあまり大っぴらに語られないかもしれません。例えばカセットブック「チルドレン・クーデター」のブックレットにはわけのわからない漫画が載っています。無茶苦茶ですが、あれを載せることに平気なプロデューサーって何事でしょう。当時音楽雑誌に「音楽と無関係なイラストが載っていて意味不明」と酷評されましたが、あの音楽とあの漫画を無関係と取るか、直結させてより楽しむか、センスが問われるのです。
 アマリリスのプロデュースだってある意味かなり変な仕事と言えるはずなんです。先見ありすぎです。
 今でも変なセンス略して変センスの部分は健在で、アマリリス【改】ではかせをやったりしておられます。洞察・先見・変センス。

 と、そんなわけで鈴木創士をゲストに迎えるにあたっての因果を巡る旅は案の定83年の原初にまで飛んだりしておりまして、通常なら大ボス佐藤薫に行き着いてここでエンディングを迎えるのがスジであります。
しかし因果というものはクロノス的直線的時間軸をただ遡ればいいというわけではないのでして、時系列を超越したある部分に因の芽が潜んでいるということもあります。発端の発端には、その発端の発端があるということです。

次回いよいよ最終回、驚愕のラストシーンに備えよ。

註釈

カセットブック「チルドレン・クーデター」

カセットブック チルドレンクーデター
discography チルドレン・クーデター | チルドレンクーデター公式

ブックレットのわけのわからない漫画の例
さぼてん坊やの血塗られた生涯

EP-4 征服・肉体・複製

征服・肉体・複製


…つづく

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